スタインウェイ
言わずとしれた、ピアノの名器である。
ピアノは他の楽器と違って持ち運びができない。
自分の楽器で、いつも練習している楽器で本番で演奏することができないのだ。
そうするとある程度本番は出たとこ勝負となる。
そのホール、会場にある楽器を使わなくてはならない。
今までの経験で、調律できていなくて音の狂いが尋常でないとか、
全く音が響かないとか、
ペダルが異様に硬いとか、
初めましてのピアノにやられた!ってことは多々あった。
だけど、逆に初めましてで心が震える経験もある。
そういう経験ができるところが、ピアノの醍醐味でもあると思う。
人生で3回、スタインウェイでうっとりした。
その3回目がつい最近だったのだけど、
友人が思い切ってスタインウェイを買ったとの連絡があり、
それを弾かせていただきにお邪魔した。
そのピアノとの出会い、お迎えするまでの道のりなど、
楽しく聞かせてもらい、
その場にあったヤマハのグランドピアノから弾いた方が違いがわかって面白いよ、との
友人のアドバイスでまずヤマハの前へ。
このピアノもいいピアノなんですよ、素直で可愛い音!
ふむふむ、それでもそんなに違うのか?といざスタインウェイの前へ。
ショパンのワルツを弾いてみた。
!!!!!
搬入されたのが最近で、まだ安定していない状態との話があり、
正直わかるのか?私にわかるのか?と思っていた。
いやー、私でもわかる。
このピアノが特別なピアノだということが。
単に音がいいだけではなく、
不思議な感覚になった。
100年くらい前の楽器をオーバーホールしている(外側や木の部分は100年もの、弦など中身は最近のもの)その楽器は、私が弾いたワルツを何人の人が奏でてきたのだろうか。
弾きながら、心のままに弾けば応えてくれる、
しかし、少し欲を出す?余計なことをすると「それ、いらない」とピアノに言われてる気がした。
これは本当に初めての体験だった。
このピアノで練習したら、いらないものは削ぎ落とされるような、
そんな演奏になるのではないか?
ピアノが自分の経験を弾き手に伝えてくれるような?なんともいえない感覚に
心が躍った。
月並みなことを言ってしまうと、奥が深い、となるだろう。
ピアノに生まれて100年のこの楽器は、もはやもう物ではなく、
間違いなく人生の大先輩なのだ。
それから私は、結構真面目に練習している。
シューベルト、ショパン。
あ、ハノンも弾いています。
いつか自分が納得できるように弾けたら、
またあの楽器を弾かせてもらいたいなあ。
そこで、「まだまだだよ」「また無駄なことして!」と
ピアノに怒られるかも?と思っただけでワクワクしてしまう。
そんな妄想を抱きながら、今日もピアノに向かうのだった。
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